<施設見学レポート>高齢者向け施設の見学レポート
医療を基盤としたまちなかの複合拠点
おおまちてらす
外観(「おおまちてらす」公式サイトより)
医療の枠を越え、まちへとひらく拠点
「おおまちてらす」は、JR郡山駅から徒歩約10分の中心市街地に位置する複合施設である。2025年4月に開設された本施設は、約100年にわたり地域医療を支えてきた星総合病院の旧本院跡地に誕生した。
事業者は公益財団法人星総合病院。本プロジェクトには、これまで地域に支えられてきたことへの恩返しとして、医療の専門性を病院の枠を越えて活かしたいという思いが込められている。
医療に加え、子育て支援、健康づくり、食、ものづくり活動、住まいといった機能を一つの建物に集めたのも、その考えに基づくものである。それぞれが単独で完結するのではなく、ゆるやかにつながり合うことで、人と人の関係を育み、地域の日常を支えていくことを目指している。
今回は、こうした理念のもとに整備された「おおまちてらす」の取り組みについて、実際の見学内容をもとにレポートしていきたい。
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理念をかたちにした建築
外観
エントランス
入口
外観
テラス
吹き抜け
建物のコンセプトは「ひろば × ひかりにわ × てらす」。
神社側に開かれた多用途のひろば、各階に設けられたテラス、広いガラス面による自然光の取り込みなど、外とのつながりを意識した設計がなされている。建物中央には広い吹き抜け空間が設けられ、視線が抜ける構成となっている。上下階の気配も自然に感じられ、建物全体がゆるやかにつながっている印象を受ける。
見学中、特に印象に残ったのは、理事長自らが素材選びから空間構成に至るまで深く関わっている点である。外装のタイルや内装の質感、照明に至るまで、細部にわたってその意向が反映されているという。理念を言葉にとどめず、空間として具体化しようとする姿勢が建物全体から伝わってくる。
また、建物外観にあえて明確なネーミングや案内表示を設けていない点もこの施設の大きな特徴である。用途や機能を外部に明示せずに、先入観なく利用者の関心を引こうとする狙いがあるようだ。一方で、地域の人々の中には「この建物がどのような場所なのか分かりづらい」との戸惑いの声も聞かれるという。こうした姿勢を、どのように地域に理解・共有してもらうかは、今後の運営における重要な課題として意識されるべきだろう。
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医療を軸に、世代の日常が重なり合う複合拠点
フロアガイド
レストラン
レストラン
建物は地上7階建てで、館内には施設の理念である「ウェルビーイング」を反映したさまざまな機能が整えられている。
来訪者を迎える1階には直営のレストランがある。店内は大きなガラス面から自然光が差し込み、コンクリートと木の素材が調和する落ち着いた空間である。一人で静かに過ごすことも、特別な日の食事を楽しむこともできる、洗練された雰囲気が漂う。
医療法人の直営と聞き、正直なところ大きな期待はしていなかったが、実際に提供される料理は色鮮やかで、盛り付けや味付けの一つひとつに丁寧な仕事ぶりが感じられた。器にもこだわりが見られ、皿の質感や形状まで含めて一皿として完成されている印象である。
ものづくり工房
ものづくり工房
スポーツ施設
2階にはスポーツやトレーニングを行う健康づくりの場と、ものづくり工房が配置されている。工房では木工や陶芸、レザークラフトなどに取り組むことができ、ワークショップや講習会も開催されているという。身体を動かす活動と創造的な活動が同じフロアに置かれ、心身の両面に働きかける構成となっている。
保育園
乳児院
子どもの遊び場
3階には認可保育園や放課後児童クラブ、児童家庭支援センター、乳児院が入り、子どもを中心とした場が集約されている。放課後になると、児童クラブの子どもたちの遊ぶ声が館内に広がり、活き活きとした賑わいが生まれるという。
クリニックフロント
健診センター
健診センター
4階には健診センターとクリニックが併設され、健診から外来診療、生活相談までを担う体制が整っている。なかでも健診センターは、施設内で安定的な収益が見込める機能として位置づけられており、実際に多くの利用者でにぎわっている様子がうかがえた。医療法人として長年培ってきた専門性が、最も直接的に発揮されているフロアともいえる。
5・6階には、シニア向け賃貸住宅「おおまちてらすレジデンス」が配置されている。住戸は、趣味や社会活動を楽しみながら地域と関わる暮らしを前提としたコンパクトな設計である。
医療、子育て、食、運動、創造活動、住まいといった機能が一つの建物の中に集まり、子どもや働く世代、高齢者がそれぞれのペースで行き交うことで、さまざまな世代の日常が同じ空間の中で自然に交わっている。
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まちなかで叶える、アクティブシニアの住まい
リビング
キッチン
収納
輻射パネル式空調
シャワーブース
トイレ
建物の5・6階に位置する「おおまちてらすレジデンス」は、自立した生活が可能な高齢者を主な対象とするシニア向け賃貸住宅である。全46室のうち現在の入居者は5名で、80代から90代の方が中心となっているという。
住戸は単身世帯向けの1R・1LDKが中心で、専有面積は30㎡前後から40㎡台。各住戸はシンプルな設計でありながら、輻射パネル式空調や床暖房が設えられ、季節に左右されにくい室内環境が整えられている。電動ベッドも備えられ、一定の配慮が見られる。
居室にはシャワールームのみが備えられ、浴槽は設けられていない。入浴を希望する場合は共用浴室(4室)を利用する仕組みである。実際に見学した共用浴室は、外の景色を眺められる開放的な空間で、ゆったりと落ち着ける設えとなっていた。1回50分440円の利用料はかかるものの、準備や後片付けをスタッフが担う体制や空間の快適さを踏まえると、その対価として一定の価値は感じられる。
廊下
ダイニング
ダイニング
ランドリー
共用キッチン
共用浴室
また、居室内に洗濯機置き場はなく、洗濯は無料の共用ランドリー設備を利用する。住戸内の設備を最小限にとどめ、その分を共用空間で補う暮らし方が前提とされていることがうかがえる。
食事については、1階のレストランが入居者向けの食事を提供しており、5階のラウンジでとることができる。内容は和食を中心とした構成で、料金は1日2,640円である。一方で、5階には各種調理機器や食器を備えた共有キッチンも用意されており、自ら料理を楽しむことも可能である。提供型と自立型の双方の食の選択肢が整えられている点は、このレジデンスの特徴の一つといえる。
生活面に加え、医療体制についても触れておきたい。日中は看護師や保健師がコンシェルジュとして常駐し、日常の健康管理や健康相談を行うほか、4階のクリニックをかかりつけ医院として利用できる。コンシェルジュは7時から20時まで対応し、夜間は警備員が常駐する体制である。緊急通報は星総合病院につながる仕組みとなっており、必要に応じて星総合病院との連携により最適な医療を提供できる。医療との距離が近いことは暮らしの中での大きな安心につながっている。
介護が必要となった場合には、外部の訪問介護サービス等を利用しながら生活を継続することが想定されている。医療法人が主体であることから、医療機関との連携のもとで支援体制が組まれるという。将来的な看取りについても、その強みを活かし、住み慣れた環境での生活継続を視野に入れた対応が検討されている。
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まとめ
おおまちてらすは、100年にわたり地域医療を担ってきた星総合病院が、医療の枠を越え、まち全体を支える拠点づくりに挑戦する試みである。医療を軸に、食や運動、子育て支援、創造活動、住まいといった日々の暮らしに関わる場を一つの建物の中に重ね、地域のウェルビーイングの向上を目指している。
その取り組みは、利用者に向けたサービスの拡張にとどまらない。医療職をはじめとする職員にとっても、従来の役割の延長ではない働き方を模索する契機となっている。医療の専門性を地域との接点の中で活かしていこうとする姿勢は、施設のあり方だけでなく、組織のあり方にも変化を促しているようだ。
こうした挑戦の一環として、1階の地域交流広場では毎月「おおまちてらすマーケット」などのイベントが開催されている。地域住民や来訪者との交流を通じて理解を深める機会が設けられており、理念を地域の日常の中へと根付かせるための重要な仕掛けとして機能しているように感じられる。
一方で、理念をどのように地域へ浸透させ、実際の利用へと結びつけていくかは今後の課題である。用途を強く示さない建築の方針や、医療色をあえて前面に出さない構成、レストランの価格帯、そしてシニア向け賃貸住宅における住戸の設えとターゲット層との関係性など、思想と実装の間には丁寧な調整が求められる要素も少なくない。
理念を形にすることと、それを地域の中で選ばれ続ける場へと育てていくこと。その両立こそが、おおまちてらすの次の段階に向けたテーマであり、可能性でもあると感じた。
【施設概要】
- ● 住 所
- :
- 福島県郡山市大町二丁目1番16号
- ● 最 寄 駅
- :
- JR東北本線・東北新幹線「郡山」駅 徒歩約10分
- ● 種 別
- :
- シニア向け賃貸住宅
- ● 運営主体
- :
- 公益財団法人 星総合病院
- ● 入居要件
- :
- 概ね60歳以上の自立した生活が可能な方
- ● 居 室 数
- :
- 46室
- ● 居室面積
- :
- 約30㎡前後~40㎡台(1R・1LDK中心)
- ● 入居一時金
- :
- なし
- ● 月額利用料
- :
- 賃料+共益費+生活支援関連費等(詳細金額は住戸タイプによる)
- ● 公式サイト
- :
- 詳細については公式HPをご確認ください
https://omachi-terrace.jp/
(2026年3月時点の内容です)
※このレポートの情報には細心の注意を払っておりますが、内容の正確性を保証するものではありません。
また、このレポートはケアデザインが見学した施設の情報を簡易にまとめたものであり、
これをもって当方による推薦・紹介等を意図したものではありません。


