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<施設見学レポート>高齢者向け施設の見学レポート

介護付有料老人ホーム

舞浜倶楽部 新浦安フォーラム

本館 外観

中庭

スウェーデンのケアを取り入れた介護付有料老人ホーム

 福祉先進国スウェーデンの理念や手法を取り入れた運営を行っている「舞浜倶楽部 新浦安フォーラム(以下、舞浜倶楽部)」は、徹底した個別ケアを実践しながら、高齢者のQOL(quality of life=生活の質)を守る介護に取り組んでいる介護付有料老人ホームである。
 ホームを運営する株式会社舞浜倶楽部(本社:千葉県浦安市)は、有料老人ホームの運営や介護保険事業の他に、スウェーデンの認知症ケアと緩和ケアを取り入れた教育プログラムの指導などを行っている。

本館2階から見た風景

離れ家 外観

  • 「和」を取り入れた建築デザインで五感を刺激

    1階 ラウンジ

    2階 多目的ホール

     「舞浜倶楽部」は、都心からも程近い千葉県浦安市に位置している。最寄りの「新浦安」駅から徒歩15分、周辺は住宅や学校がある落ち着いた環境である。
     ロシアのエルミタージュ美術館をモデルに作られた建物は、外壁のグリーンがとても美しい洋館で、周辺の建物の中でひときわ目を引く存在だ。

     建物は地下1階地上3階建で、浦安市初の小規模多機能型居宅介護「きはち」、認知症対応型デイサービス「はじめ」、介護相談センター「よろこび」、「ひまわりクリニック」が併設される複合型の施設となっている。
     1階には、地域の交流スペースとしても利用されているラウンジとカフェテリア、理美容室、厨房、2階には150名収容可能な多目的ホールと健康管理室、各ユニットをつなぐ「ユニットリビング」がある。多目的ホールでは、コンサートや講師を招いたセミナーの開催、映画上映会なども行っており、「ユニットリビング」は、毎日の食事の他、さまざまなイベントも行っているため、日中は入居者の交流の場となっている。

    小規模多機能型居宅介護「きはち」和室

    浴室(「舞浜倶楽部」HPより)

     館内の内装は、外観とは異なり、高齢の方が長年慣れ親しんだ和風のデザインとなっている。床は杉の無垢板、壁は珪藻土、浴室にはヒノキ風呂を設置する等、木のぬくもりが感じられる自然素材を多く取り入れた内装だ。建具には格子戸や引き戸を使用し、障子や畳のスペースも設ける等、和の雰囲気や懐かしさがあふれている。また、認知症の方でも場所の認識がしやすいように、壁面の色を変える等の工夫もなされている。
     館内は極力手すりの設置を少なくし、和室への出入口にはあえて段差を設ける等、バリアフリーではない場所も多い。それは、入居者の残存機能の低下を防ぎながら伸ばしていくような支援を行なうため、すべてをバリアフリーにする必要はないという考えからだという。これらは、高齢者や認知症の方の味覚、視覚、聴覚、触覚、嗅覚といった五感を刺激することで、持っている残存機能を掘り起こすことができるようにデザインされたものだ。

     また、芝生の緑がまぶしい中庭の一角には数寄屋造りの「離れ家」があり、本格的な会席料理等を楽しむことができる。和洋を織り交ぜた和洋折衷の雰囲気がどこか懐かしく、気分を落ち着かせてくれる。

  • プライバシーを確保した快適な住空間と入居にかかる費用

    ユニット入口

    居室

     「舞浜倶楽部」では、1ユニット6~26名のユニットケアを採用している。居室フロアを1階「あおばの街」、2階「かわの街」「汐の街」「けやきの街」、3階「さくらの街」「そらの街」「ゆめの街」と7ユニットに分け、ユニット毎に食事やイベントを行っている。

     居室は、1人部屋71室(23.62~27.31㎡)、2人部屋5室(28.09~43.79㎡)の全76室。すべて1Rタイプで居室内には、トイレ、シャワーブース(一部居室を除く)、洗面設備、ミニキッチン、エアコンなどが完備されている。全室に床暖房を採用しているため、冬でも暖かな空間で過ごすことができる。
     また、一般的な施設では、扉を開けるとすぐにベッドが見えてしまう造りとなっているが、「舞浜倶楽部」では、廊下の扉と寝室との間に内扉を設置(一部居室を除く)することで、必要以上にプライベート空間を侵さないような配慮がなされている。

    トイレ&シャワーブース

    洗面

     入居にかかる費用は、入居時に支払う「入居一時金」と入居後に毎月支払う「月額費用」の大きく2つに分けられる。
     入居一時金は、1人入居の場合、基本プランは2,520万円、90歳以上限定プランは1,980万円、80歳以上月額減額プランは3,108万円、90歳以上月額減額プランは2,442万円となっており、2人入居の場合、基本プランは3,990万円、90歳以上限定プランは3,135万円となっている。いずれも、初期償却はなく、償却期間は基本プランが7年、90歳以上が5年6ヶ月。その他、入居時に費用がかからない「月払いプラン」も用意している。
     月額費用は、「入居一時金プラン」の場合、1人入居で275,760円(内訳:家賃90,000円、管理費108,000円、食事代77,760円)、2人入居で449,920円~499,920円(内訳:家賃100,000円~150,000円、管理費194,400円、食事代155,520円)。「月払いプラン」の場合、1人入居で735,760円(内訳:家賃450,000円、管理費108,000円、食事代77,760円)となっている。
     その他、介護保険による自己負担金、医療費、電話代等が別途かかる。また、自立の方は、生活サポート費として月額64,800円(税込)が必要となる。

  • スウェーデン式を取り入れた介護サービスと認知症ケア

    タクティールケア(「舞浜倶楽部」HPより)

    「ブンネ・メソッド」に使用する楽器

     「舞浜倶楽部」の介護サービスには3つの特長がある。

     1つ目は、個々の入居者に合わせたきめ細やかな「個別ケア」の実践だ。入居者が最期まで自分らしい生活を送ることができるように「コンタクトパーソン」という専任の担当スタッフが付き、その方に寄り添いながらきめ細やかなサポートを行っている。具体的には、入居者のこれまでの生活や家族のこと、病気、趣味等を把握し、ケアプランや介護に役立てるとともに、他のスタッフと情報を共有しながら入居者の生活を支えている。担当者が明確になっていることで、入居者本人だけでなく家族にとっても大きな安心につながっているようだ。
     また、介護スタッフは1.5対1と基準(3対1)の倍以上の人員を配置し、手厚い介護体制をとっているため、入居者の生活スタイルに合わせたケアが実現できる。

    理美容室

    リハビリ室(「舞浜倶楽部」HPより)

     2つ目は、スウェーデン生まれのタッチケア「タクティールケア」の導入である。「タクティールケア」とは、手足や背中などを優しくなでる肌と肌の触れ合いによるコミュニケーション方法のひとつで、身体の痛みの緩和や不安を抑え気持ちを落ち着かせる効果がある。「舞浜倶楽部」では、日常的な認知症緩和ケアとしてケアプランにも盛り込み、入居者の状態に応じて実践している。ケア専用の静かな空間で受けることにより不安や痛みが和らぎ、認知症による興奮状態や不安感等の周辺症状が軽減されたり、睡眠の改善等に効果が表れているという。「舞浜倶楽部」の多くのスタッフは、スウェーデンの認知症緩和ケアを学ぶことができる「日本スウェーデン福祉研究所(JSCI)」の認定研修を受けており、タクティールケアを行うことができる。

     3つ目は、スウェーデンのステン・ブンネ氏によって開発された「ブンネ・メソッド」という音楽ケアをアクティビティに取り入れていることだ。「ブンネ・メソッド」は、誰でもすぐに演奏できるブンネ楽器を用いた認知症ケアで、プログラムに参加することで、心身の機能維持や記憶の訓練、脳の活性化につながる。さらに、楽器を演奏できたという成功体験が、喜びや達成感、さらなる意欲の向上、生きがいさえももたらす活動となっている。
     「舞浜倶楽部」では、「ブンネ・メソッド」を週2回実施。ユニットごとに20名程度の方が参加され、それぞれの状態に合わせた楽器を選んで演奏を行っている。とても人気のあるプログラムで、楽しみにしている入居者も多いという。音楽が参加者同士の接点や共通言語となり、コミュニケーションツールとしての役割も果たしている。

  • 医療との連携で、最期まで自分らしく暮らす・
    心のこもった手作りの料理で生活に彩を

    居住フロア

    ユニットリビング(「舞浜倶楽部」HPより)

     「舞浜倶楽部」では、看護師が24時間常駐し、日頃の健康管理や緊急時の対応等を行っている。医療依存度の高い方や重度の認知症の方も、館内併設の「ひまわりクリニック」の医師(認知症サポート医)との協力体制のもと積極的に受け入れている。夜間もオンコール体制をとっているため安心だ。
     また、看取りケアにも力を入れており、これまで希望者のほぼ100%の看取りを実現してきた。経験豊富なスタッフと医師による緩和ケアの実践により、身体的・精神的苦痛を和らげ、最期までその人らしい人生が送れるようにサポートしている。看取りの後、希望者に対しては、1階ラウンジでお別れ会も実施する。家族だけでなく、共に過ごした入居者の方々やスタッフが故人を偲び、思い出を語り合う貴重な時間だ。
     現在の入居者は、69名(男性18名、女性51名)。平均年齢87.5歳、平均要介護度2.5で、ほぼ全員が看取りを希望している(2018年4月現在)。

    カフェテリア

    メニュー例

     日々の生活に彩を与え、幸せな気持ちにする要素のひとつが「美味しい食事」であろう。「舞浜倶楽部」では、一流料亭出身の料理長が手作りで飽きのこない料理を提供している。高齢者施設では珍しく、食器に陶器を使用し、毎回料理に合わせて食器を変えている。色鮮やかな料理と美しい盛り付けは目にも楽しく、ボリュームがあるにもかかわらずほとんどの方が完食されている。
     メニューは、朝食、昼食、夕食ともに1種類のみで、和食を中心に、洋食、中華をひと月にバランスよく提供している。さらに、スウェーデンをはじめとした各国の料理や季節に合わせたイベント食なども趣向を凝らしており、食事の時間が楽しみになるような工夫がされている。
     また、キザミ食やミキサー食などの食事形態、塩分制限等の治療食の他、入居者の好みや健康状態に合わせて、できる限り希望に添った形での提供を目指している。ミキサー食は、一般的に食感や味の違いが分かりづらいため食欲が落ちやすいが、「舞浜倶楽部」では、前日から調理し、やわらかく味が染み込みやすくなるように工夫をしている。入居者が美味しく食べられるように一人ひとりに合わせたきめ細やかな対応を行っている。料理長の「料理人として究極の常連さんと思って日々作っている」との言葉の通り、その想いが伝わってくる。

  • まとめ

    グスタフ・ストランデル氏

    正面玄関

     2012年に「舞浜倶楽部」の代表取締役社長に就任したグスタフ・ストランデル氏は、スウェーデン出身で、10年に渡り、スウェーデンの様々な介護におけるコンセプトや手法を日本に紹介してきた人物だ。日本国内の300箇所以上の施設を見学し、日本の介護についても学んできた。ストランデル氏は、福祉先進国スウェーデンの「個人の自由を尊重するケア」を日本の考え方に合うようにアレンジし、「舞浜倶楽部」で独自の介護を提供している。

     「舞浜倶楽部」では、介護が必要になっても、認知症になっても“QOL(生活の質)”を守り、最期まで自分らしい生活を送れることを主眼としたケアに取り組んでいる。特に認知症ケアにおいては、①コミュニケーションと関係 ②チームワーク ③症状のコントロール ④家族支援の4つの柱を軸に、「タクティールケア」や「ブンネ・メソッド」等のスウェーデンケアを取り入れ、本人とその家族をチームで支えている。その温かな関係から、施設というより「我が家」というほうがしっくりくる。実際に、ここで暮らす入居者の表情は穏やかで、「我が家」にいるような安心感に包まれている。

    エントランスに飾られている書

    離れ家

     また、施設内に教育専門機関「スウェーデン緩和ケア研修センター」を設置し、独自のプログラムで人材の育成にも積極的に取り組んでいる。スタッフのレベルに合わせた研修を徹底的に行うことで入居者が安心して暮らせる環境とその暮らしを持続的に支える体制を整えることができている。また、自社スタッフだけでなく、介護関係者や介護を担っている家族、地域の方に向けた講演会や研修も積極的に行っている。

     「舞浜倶楽部」は、スウェーデンケアの福祉理念や手法、技術を日本の介護とバランスよく融合させた新しい介護のかたちを確立した施設だ。2017年にはAsia Pacific Eldercare Innovation Awards のFacility Of The Year - Ageing In Place 部門で最優秀賞を受賞する等、その独自のケアは世界でも認められている。
     身近な大切な人に、最期まで自分らしい人生を過ごしてほしいという「舞浜倶楽部」の願いは、ホームの中だけでなく、地域へ、さらには世界へとますます広がっていくようだ。

【施設概要】

住  所
千葉県浦安市高洲1-2-1
最 寄 駅
JR京葉線「新浦安」駅より徒歩15分
種  別
介護付有料老人ホーム
敷地面積
7,893.08㎡
延床面積
5,544.30㎡
建  物
鉄筋コンクリート造、地上3階地下1階
事業主体
(株)舞浜倶楽部
権利形態
利用権方式
入居要件
年齢65歳以上の要支援・要介護・自立
居 室 数
76室(定員81名)
居室面積
23.62㎡~43.79㎡
入 居 金
1,932万円 ~ 3,108万円(1人入居の場合)
3,135万円 ~3,990万円(2人入居の場合)
※初期償却:なし、償却期間:7年(90歳以上の場合:5年6ヶ月)
月額利用料
1人入居:205,760~735,760円
(内訳:家賃20,000円~550,000円、管理費108,000円、 食費77,760円)
2人入居:449,920~499,920円
(内訳:家賃100,000円~150,000円、管理費194,400円、 食費155,520円)
※その他の別途費用:介護保険自己負担分、医療費、電話代等
※自立の方は、生活サポート費月額64,800円/人が必要
公式サイト
https://www.maihamaclub.co.jp/shinurayasu/

(2018年8月時点の内容です)

※このレポートの情報には細心の注意を払っておりますが、内容の正確性を保証するものではありません。
また、このレポートはケアデザインが見学した施設の情報を簡易にまとめたものであり、 これをもって当方による推薦・紹介等を意図したものではありません。