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<施設見学レポート>高齢者向け施設の見学レポート

アクティブシニア向け住宅

スマートコミュニティ稲毛

スマートヴィレッジ稲毛外観(スマートコミュニティ提供)

クラブハウス外観(スマートコミュニティ提供)

日本初の大型アクティブシニアタウン

 世界一の長寿国日本では、すでに人生90年時代が始まっている。 子育てを終え、仕事もリタイアした後に待っている30年間の新しいステージをどのように過ごすべきか?
 今回はそんな問いに対しアクティブシニアを対象に新しいセカンドライフを提唱する、「スマートコミュニティ稲毛」を見学した。

 近年、日本の有料老人ホームや介護施設の数は増加し、その質も充実してきている。しかし、高齢になれば要介護になるとは限らず、むしろ元気に毎日を過ごしている70代、80代の人のほうが多い。
 国が進めている高齢化に向けた政策は、「要介護者」向けが中心だが、その対象となるのはシニア全体の15%に過ぎず、逆に言えば、85%を占めるアクティブシニアのための施策はほとんどないに等しい。
 「元気なシニアが人生を楽しむ」受け皿となるシステムやインフラが整っていない日本の現状に大きな疑問を抱き、生まれたのが、「スマートコミュニティ稲毛」だ。

グラウンド(スマートコミュニティ提供)

  • 多彩なアクティビティをサポートする充実施設

    クラブハウス内

    シミュレーションゴルフ

     東京駅八重洲口から高速バスに乗って50分。「長沼」停留所から約50mの距離に、「スマートコミュニティ稲毛」はある。東京ドーム2.5個分の広大な敷地を持ち、「スマートヴィレッジ稲毛」(マンション)と「コミュニティ空間」(クラブハウス、グラウンド)の3つの施設からなっている。

     「スマートコミュニティ稲毛」は、リタイアした元気なシニアが充実したセカンドライフを送るための「アクティブシニアタウン」だ。同じような世代、ライフスタイル、趣味嗜好の人たちが集まってコミュニティを形成し、生活している。

     入会するには、まず、「スマートコミュニティ稲毛」に入会申し込みをし、同審査で入会を認められた人が、「スマートヴィレッジ稲毛」(マンション)を購入することになる。入会条件は、「スマートヴィレッジ稲毛」(マンション)に入居、または入居予定で、入居時に健康的に自立した日常生活を送ることができる、原則50歳以上の人だ。「スマートヴィレッジ稲毛」の分譲マンションのみの購入や「コミュニティ空間」の利用権どちらか一方という契約はできない。

    和室

    ダンスホール

     大型スーパーだった施設を大胆にリノベーションした約1万㎡(初期は1階のみ)の広大なクラブハウスには、メインダイニング、バーラウンジ、アトリエ、ダンスホール、フィットネスジム、音楽スタジオ、茶道や書道に適した和室、読書ラウンジ、カラオケルーム、卓球場、シミュレーションゴルフ、麻雀ルームなど様々なアクティビティを楽しめる設備と空間が用意されており、毎日、陶芸やフラダンスなどの教室やサークル活動が実施されている。クラブハウス中央部にあるステージでは、コンサートや著名人の講演会などが開催され、入居者が家族や友人を招いて一緒に楽しむ場となっている。

     現在は、1階とトランクルームとして3階の一部分しか使われていないが、今後は、施設の使い道やルールなど、コミュニティの運営は、居住者間で話し合ってもらい、居住者自らの手による自治運営の体制づくりを目指していくという。

     クラブハウスから歩いて約10分の場所には、7万㎡を超える広さのグラウンド(元東京都食品健康組合のグラウンド)があり、野球場、テニスコート、70ヤードのゴルフ練習場、バーベキュー広場、一周700mのジョギングコースなどがある。
     ゴルフ練習場では、遊びに来た娘さんと元気に汗を流すシニアの姿が見られた。愛好者が集まったゴルフコンペは17回(2012年7月3日現在)を数え、日帰りツアーや農園での収穫物を味わうバーベキューパーティなど住民同士の交流も活発だ。

    音楽スタジオ

    クラブハウス内レイアウト

  • セカンドライフを楽しむためのサービス

    ダイニング

    マイボトルが並んだ棚

     価格や費用面でも「シニアの生活防衛」をコンセプトに、食事や教養娯楽、健康維持、防犯対策などにかかるモノやサービスを入居者全員でシェアリングすることで生活費の大幅なコストダウンを図っている。引退して年金収入を主体に暮らす人が、現役時代の生活水準を落とさずに利用できる金額設定だという。
     将来的には、1,000人規模のコミュニティを目指しており、それによるスケールメリットで通常コストの50%削減も達成可能と試算している。今までの生活レベルをアップさせながら、今まで以下の生活費で、セカンドライフを存分に楽しむ。そんな暮らし方を提唱している。

     朝夕の食事は、コミュニティ費月額に含まれており、朝食はビュッフェスタイル。夕食は、日本料理の老舗「なだ万」監修のメニューと管理栄養士による減塩・低カロリーコース(おかずのみ総カロリー600kcal以内、塩分量6g以内)の2コースから選択でき、メインダイニングで提供される。昼食は、別途有料で提供されている。食事はオリジナルプログラムで管理され、2回連続連絡もなく食事を摂らなかった場合には、安否確認を行うシステムになっている。連続5日間不在で食事を摂らなかった場合は、返金制度もある。
     ダイニングスペースの棚にはずらりとマイボトルが並ぶ。夫婦や仲間と晩酌を楽しむ姿があちらこちらで見られ、食後も、「バーラウンジ」でお酒を囲んでの語らいが続くようだ。

    夕食(スマートコミュニティ提供)

    デンタルクリニック(スマートコミュニティ提供)

     アクティブな毎日を過ごしていくために、健康サポートも重要だ。
     クラブハウス内にある保健室では、日中(9時~18時)看護師が常駐し、健康相談を行なっている。近隣病院との連携も推し進め、山王病院による健康診断(初回はサービス)や救急の体制も整えている。
     現在、クラブハウス内のクリニックエリアには、入居中の歯科医によるデンタルクリニックが開設されているが、将来的には総合クリニックの開設を目指し、内科や整形外科など、それ以外のクリニックの開設も進めていく予定だ。

     現在、入居者は163組(約215人)で、平均年齢は69歳。単身と夫婦の割合は2対1、男女の割合は4対6だ。要介護認定を受けている方もすでに3名を数え、施設内に介護事業所はないが、ケアマネジャーによる介護相談があり、必要に応じて介護事業所の紹介を行なっている。
     比較的軽度な介護や生活支援を要することになった場合に備え、今年度中には、介護専門の子会社スマートケアによる居宅介護支援事業所と訪問介護事業所の立ち上げを行なう予定だ。

  • スマートコミュニティ稲毛の専用住宅
    「スマートヴィレッジ稲毛」

    スマートヴィレッジ稲毛外観
    (スマートコミュニティ提供)

    ラウンジ

     居住スペースとしては、クラブハウスと道路を隔てた場所に「スマートヴィレッジ稲毛」という14階建てのマンション2棟(510世帯)がある。

     居住棟の入口にゲートを設け、外部からの出入りを制限する「ゲーテッド・セキュリティ」を採用し、24時間有人監視をしている。その他、警備スタッフが敷地内および建物内を日中巡回し、異常がないかをチェックしているので安心だ。

     クラブハウスと居住棟のフロントにはコンシェルジュがいて、買い物や外出といった生活面でのサポートから、アクティビティの企画、サークルの設立にいたるまで、気軽に相談することができる。各住戸とフロントはインターホンでつながっており、24時間いつでも連絡をとることができる。

     フロントには、居住者同士の交流のためのサロンコーナーも設置され、カラオケルームや麻雀台、マッサージ機などもあり、24時間いつでも利用することができる。
     コミュニティバスのサービスもあり、クラブハウスとスマートヴィレッジを定期的に往復している他、買い物や病院など、行き先に応じて乗り合わせることもできる。

    Aタイプ居室(スマートコミュニティ提供)

    Bタイプ居室(スマートコミュニティ提供)

     居室は33.24㎡と70.12㎡の2タイプが主だが、階によって価格が変わる。
     今年度中に現在建っているマンションの前に、低層階のマンションも着工予定だ。(完成後の総戸数は810戸の予定)

     居室は、全室オール電化で、過度にバリアフリーを感じさせない作りになっている。
     トイレとお風呂は一体で、クラブハウスで食事ができることを前提にキッチンはシンプルな機能のものになっている。また、手すりは標準では設置されていないが、壁側に下地補強はしてある。

     居室では、ペット飼養細則に準じてペットを飼うことができる。
     ペットが苦手な方への配慮として、エレベーターにはペットマークのボタンがついており、“エレベーターの中でペットと一緒にいること”を外に知らせることができる。

    お風呂(左)・キッチン(右)

    エレベータの外パネル(左)・インターホン(右)

  • まとめ

    そば打ち(スマートコミュニティ提供)

    ヨガ(スマートコミュニティ提供)

     リタイアした元気なシニアが充実したセカンドライフを送るための「アクティブシニアタウン」。日本にも美奈宜の杜(福岡県朝倉市)などの先行事例があるが、まだまだなじみが薄いのが現状だ。

     アメリカ人は、仕事をリタイアした後は新たな土地に移住し、新たなコミュニティに入っていくという生活スタイルを好む。「ハッピーリタイヤメント」と呼ばれ、さまざまなアクティビティを満喫しながら、活き活きと暮らす人が多い。それに対し、日本人は、リタイア後も今までのコミュニティに身を置くことが多く、歳を重ねるにつれ、付き合いの幅や行動範囲がどんどん狭くなり、単調で充実感のない生活、孤独な毎日を過ごすシニアの方が増えてはいないだろうか。住み替えには消極的で、人生を楽しむためではなく、介護の心配が高まってからあわてて施設を探すというケースが圧倒的に多いのが現状だ。
     「スマートコミュニティ稲毛」は、日本のシニアに向けて提案する新しいライフスタイルの形の一つと言えるだろう。

    ゴルフレッスン(スマートコミュニティ提供)

     しかし、日本に馴染みが薄いこともあり、入居募集から2年で、163組(215人)の入居に留まっており、コミュニティの活性化や採算面からも入居者の増大が望まれる。最近では、テレビでも注目の施設として紹介されることが増え、反響を呼んでいるそうであり、今後、入居者がスムーズに増えることが期待される。

     将来介護が必要になった場合の不安も残る。介護が必要になった時に備え、クラブハウス内に居宅介護支援事業所と訪問介護事業所の設立を行い、介護度が重くなった時には、提携施設を紹介するが、住み替えも視野に入れなくてはならないことを含め、入居前に十分検討する必要がある。

     分譲マンションは、権利形態が利用権方式と違い区分所有権なので、子供に相続させたり譲渡や売却が可能であり、資産形成の面でも有利である。
     しかし、コミュニティ入会がセットになったマンションであるために、将来転売時には、「ハード」としてのマンションに加え、コミュニティの「ソフト」価値も重要な購入判断の要素となるため、入居者と事業者による魅力的なコミュニティ運営が重要である。

     日本における本格的なシニアタウンの形成は、始まったばかりだ。 「スマートコミュニティ稲毛」は、今後、日本型シニアタウンが開発されていくうえでのモデルとなることは間違いない。
     今後、どのような発展、変化を遂げるのか、目が離せない存在だ。

【スマートヴィレッジ稲毛 施設概要】

住  所
千葉県千葉市稲毛区長沼町25-1
最 寄 駅
JR総武線「稲毛」駅東口、京成バス1番乗り場から「こてはし団地」行き乗車。
「長沼」停留所まで18分、下車後徒歩2分
種  別
分譲マンション
敷地面積
22,806.1㎡
延床面積
47,781.06㎡
建  物
鉄筋コンクリート造、地上14階建 2棟
居 室 数
510戸(将来は810戸)
居室面積
33.24㎡~140.89㎡
料  金
【Aタイプ(33.24㎡)1F~6F】
1,519.5万円~、管理費:8,000円/月、修繕積立費:4,970円/月
【Bタイプ(70.12㎡)1F~10F】
2,639.5万円~、管理費:14,000円/月、修繕積立費:10,510円/月
【SAタイプ(33.24㎡)6F~7F】
1,779.5万円~、管理費:8,000円/月、修繕積立費:4,970円/月
【SBタイプ(70.12㎡)11F~13F】
2,819.5万円~、管理費:16,000円/月、修繕積立費:10,510円/月
※コミュニティ費月額として、別途1人89,000円
 (コミュニティサービス費・朝夕の食事)がかかります。
入居条件
満50歳以上で健康的に自立した日常生活を送ることができる方
(審査があります)
事業主体
株式会社スマートコミュニティ
公式サイト
http://www.smartcommunity.co.jp/

【スマートコミュニティ稲毛クラブハウス 施設概要】

住  所
千葉市稲毛区長沼町93-1
敷地面積
17,561.09㎡
延床面積
34,421.47㎡
建  物
鉄筋コンクリート造 地下1階、地上4階、塔屋1階

【スマートコミュニティ稲毛グラウンド 施設概要】

住  所
千葉市稲毛区長沼原町882-2
敷地面積
74,184.48㎡

(2012年6月時点の内容です)

※このレポートの情報には細心の注意を払っておりますが、内容の正確性を保証するものではありません。
また、このレポートはケアデザインが見学した施設の情報を簡易にまとめたものであり、 これをもって当方による推薦・紹介等を意図したものではありません。