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「地域密着型介護サービスと高専賃による街づくり」
〜制度見直しで登場した「小規模多機能型居宅介護」〜
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2008年2月22日 |
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介護保険制度発足から5年目の2006年4月、サービス体系の見直しが行われ、主として「予防」と「地域密着」を前面に打ち出した制度改定が行われた。予防の目玉は要介護認定の見直し。それまでの「要支援」を「要支援1」と「要支援2」に再分類し、要介護に移行する以前の状態を維持・改善することに力点が置かれることになった。
一方、地域密着の目玉は、それまでの「居宅サービス」と「施設サービス」の2類型に加え、両者の間を埋める3類型の「地域密着型サービス」を新たに登場させたこと。なかでも、住み慣れた地域で24時間の安心を享受できる「小規模多機能型居宅介護」は、現在、各地で建設が進んでいる「高齢者専用賃貸住宅(高専賃)」「高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)」とともに、今後の高齢者の暮らしと介護のかたちを方向づけるものとして注目されている。
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2003年6月に発表された高齢者介護研究会の報告書「2015年の高齢者介護」のなかで、「尊厳を保持できる生活空間」として、自宅か施設かの二者択一ではなく、自宅で生活しながら施設で受けられるような「365日・24時間安心」のケアを享受できる仕組みや、施設で生活をしながら自宅で受けられるような個別のケアを享受できる仕組みが提案された。「小規模多機能型居宅介護」は、この提案を受けて登場した新しい高齢者ケアの仕組みである。
具体的には、住み慣れた地域で、「通い(デイサービス)」を中心に、「訪問(夜間も含むホームヘルパー派遣)」、「泊まり(ショートステイ)」の3サービスを、利用者の状況や希望に応じて組み合わせて提供し、施設入居に至る以前の居宅生活を支援するというもの。個々のサービス内容は新しいものではないが、それらのサービスをひとつの事業者から複合的に提供できるようになった点が新しく、高齢者の実情に即した制度改定といえる。サービスを提供する事業者にとっても、すべてのサービスが一括して介護給付の対象になるため、それまでのような複雑な点数計算が不要となる。
実際のところ、こうした仕組み自体もサービスの内容と同様に新しいものではなく、介護保険制度が生まれる以前から民間によって運営されてきた、いわゆる「宅老所」が実践してきた利用者本位のケアのあり方がモデルとなっている。「2015年の高齢者介護」によって提案された「尊厳を保持できる生活空間」は、高齢者ケアの先駆者ともいえる宅老所の運営者たちがまさに目指してきたことであり、彼らが試行錯誤の末に生み出したケアのかたちが「小規模」「多機能」「地域密着」であった。小規模多機能型居宅介護が、日中、居宅高齢者がひとりになる農村などにおいて、介護保険サービス利用の不都合から生まれた新サービスであることもうなずける。
小規模多機能型居宅介護に関しては、地域密着型という趣旨に沿って、サービス事業者の指定や指導監督は市町村の権限に委ねられている。基本基準は下記のとおりだが、細かい基準や介護報酬なども各市町村の裁量による変更が認められている。また、利用者も原則として当該市町村の事業所のサービスのみを利用することになり、それまでのように他の市町村にまたがってサービスを利用することはできない(ただし、複数の市町村の指定を受けている事業所であれば、近隣市町村のサービスを利用することができる場合もある)。
[小規模多機能型居宅介護の基本基準]
■ 事業所の登録利用者は25名以下。
■ 「通い」の利用者は15名程度。
■ 「泊まり」は9名以下(「通い」の利用者に限定)。
制度の改定以降、既存のグループホームや老健、特養などの介護福祉施設をはじめ、有床の診療所や有料老人ホームに併設するかたちで小規模多機能型居宅介護を起業する事業者が相次いでいるが、高齢者専用賃貸住宅に小規模多機能型居宅介護事業所を付設するところも増えている。
(1) 小規模多機能型居宅介護
(2) 夜間対応型訪問介護
(3) 地域密着型特定施設入居者生活介護(29名以下の有料老人ホーム)
(4) 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護(29名以下の特別養護老人ホーム)
(5) 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
(6) 認知症対応型通所介護
従来からある(5)の認知症対応のグループホームと、(6)の認知症対応のデイサービスに、(1)〜(4)までの新しいカテゴリーが加えられ、「地域密着型サービス」の枠組みで再編成された。
ちなみに、夜間対応型訪問介護は、定期的な巡回訪問と緊急時の訪問を提供する。原則として、夜間の安心を確保する必要があると認められた、排泄、入浴、衣服の着脱などの全介助を要する要介護3以上が対象となる。
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たとえば、週に2回近所のデイサービスに通い、2〜3カ月に1回1週間ほどのショートステイは隣町の老健を利用、さらに別の介護事業所から週3回ホームヘルパーを派遣してもらうなど、それまでは1人の利用者が複数の介護事業者と契約するケースが一般的であった。ケアマネジャーがマネジメントするとはいえ、ケアプランによる計画的利用が優先されがちで、必ずしも利用者の希望どおりのサービスが受けられるわけではなかった。
とくにショートステイに関しては、ほとんどの施設は2〜3カ月前か遅くとも1カ月前に予約する必要があり、介護をしている家族が病気になるなどの緊急時に利用したくても、ほとんどの場合、空きがないというのが実情であった。そのため、空きを探して、普段なじみのない施設を利用せざるをえない。認知症の症状が出始めた高齢者には、こうした環境の変化が不安と混乱を招くことになり、症状を悪化させてしまうケースも少なくない。
また、デイサービスや訪問介護サービスに関しても、それまでの仕組みでは家族がこれを利用して就業できるほどの手厚いサービスが受けられるわけではなかった。仕事を持つ家族には介護との両立はきわめて難しく、介護に行き詰って施設に預けるという苦渋の選択を迫られる家族も多い。
小規模多機能型居宅介護は、毎日でも利用できるデイサービスを中心に、緊急時はもちろん、利用者の希望や状況に応じて宿泊施設に泊まることができ、夜間の訪問介護を依頼することもできる。デイサービスを利用している当日に、家族の事情などでそのまま泊まりということも可能など、まさに24時間の安心を確保できる。
2003年に内閣府が行った世論調査(図1:内閣府大臣官房政策広報室「高齢者介護に関する世論調査」2003年7月調査)によれば、将来、自分自身が介護が必要になったとき、どこで介護を受けたいかという質問に対して、回答者の約半数の44.7%(男性52.3%、女性38.6%)が、「可能なかぎり自宅で介護を受けたい」と答えている。とはいえ、かつてのように家族による介護をあてにすることはできない。厚生労働省の統計によれば、高齢者の1人世帯、ないしは夫婦2人のみの世帯は、1975年には109万世帯だったが、2005年には855万世帯。わずか30年で8倍にも増えている。子はいても別所帯で、しかも他県など遠方に住んでいるという高齢者世帯はこれからますます増えることになるだろう。自宅で介護を受けたいという希望をかなえるためには、家族に代わって地域で高齢者の暮らしを支える仕組みがぜひとも必要だった。
小規模多機能型居宅介護の登場によって、なじみの場所、なじみのスタッフに支えてもらいながら、ぎりぎりまで自宅で生活し、それがいよいよ困難になったら事業所の付帯施設に生活の場を移して、家族のように親しくなったスタッフと“一緒に暮らす”というように、きわめて自然にゆるやかに終末期の生活へと移行していくことも決して夢ではなくなった。
介護保険制度がスタートした当時、24時間のケアを必要とする認知症に対応したサービスを制度のなかに組み込むことは難しいと考えられていた。認知症に対する一般の認識もまだ浅く、その大変さが理解されていなかったこともある。小規模多機能型居宅介護が導入された背景には、高齢者世帯の増加と並んで後期高齢者の増加にともなう認知症介護の普遍化が懸念されることもあった。
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東京都では、2008年1月現在、小規模多機能型居宅介護の指定事業所は26カ所。区市町村有地を活用して建物の整備をした場合、整備費に対し1,500万円の補助をする整備促進策を打ち出したものの、新年度はわずか4カ所、計6,000万円の予算を計上予定しているのみだという。都内には、デイサービスと訪問介護サービス両事業の指定を受け、その両方で収益を確保している事業者が数多くある。これらの事業者が、あえて設備と夜間スタッフを要する小規模多機能型居宅介護事業所へ変更するとは考えにくい。
団塊の世代が高齢者の中心的な存在になる近い将来、小規模多機能型居宅介護は高齢者世帯の暮らしをサポートするもっとも利用しやすい介護サービスであることは確かなようだが、人件費や地価の高い都市圏で、「小規模」と泊まりを含む「多機能」型の事業をいかにして経営的に成り立たせていくかなど、今後解決していくべき課題は多々残されている。
「2015年の高齢者介護」では、小規模多機能型居宅介護事業所は、利用者の生活圏内、つまり小・中学校区ごとに整備することが必要だとされている。
2008年1月現在、小規模多機能型居宅介護の指定を受けた通称「小規模多機能ホーム」はすでに全国で1,300件を超えている。介護の“コンビニエンスストア”にもたとえられる多機能ホームを高齢者専用賃貸住宅に組み込むかたちで事業として成功させるケースも出てきているが、東京都をはじめとした大都市圏では足踏み状態が続いている。多機能ホームと同じ機能を持ちながら、小規模多機能型居宅介護を申請する予定がないという所も少なくない。出版大手の学習研究社のグループ会社、(株)学研ココファンがチェーン展開する「高専賃ココファン」シリーズの「ココファンレイクヒルズ」もそうしたケースだ。
同社常務取締役小早川氏にココファンの開発戦略とともに、小規模多機能ホームの事業としての将来性はあるのかを聞いた。 |
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1980年代、日本では、65歳以上の高齢者人口と0〜6歳の未就学児童数の割合が逆転した。(株)学習研究社では、子供を対象とした従来事業だけではなく、高齢社会に向けた新しい事業開発に着手した。その途上で浮上してきたキーワードのひとつが、高齢者向けの「住まい」だったという。
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多くの専門家からも指摘されているように、欧米諸国に比べて日本は高齢者向けの住宅整備が遅れている。同社では、団塊世代が高齢者マーケットの中心となる今後20年くらいの間に、高齢者向け住宅市場が大きく成長することを見込み、まずは高専賃事業から開始した。それが、同社のグループ会社、(株)学研ココファンが開発・展開する「高専賃ココファン」シリーズである。
高齢者住宅というと、どうしても設備やバリアフリーなどハードに目がいきがちだが、高専賃ココファンは、ソフト・サービスの充実を重視している。地域に開かれた住まいとすることもそのひとつ。
「たとえば、ココファンシリーズの第1号となった『ココファンレイクヒルズ』(東京都大田区)では、地元の小学校に総合学習の場として開放し、高齢者と子どもたちの交流を行っています。学研グループでは、脳機能の研究で知られる東北大学の川島隆太教授と世代間交流に関する共同研究を実施しましたが、子どもたちとの交流は高齢者の脳機能の低下を予防する効果があることがわかっています。また、子どもたちにとっては、お年よりと接することで思いやりややさしさ、集中力を向上させることができることもわかっています」
ココファンシリーズでは、このほか、入居者はもちろん地域の高齢者にも、認知症予防のための学習プログラムを提供するなど、学研グループの特色を打ち出した地域コミュニティづくりを目指している。
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もうひとつ、「食」のサポートも、ココファンならではのソフト・サービスである。高専賃ココファンシリーズは自立型と介護型の2タイプがあるが、自立型でも入居者の大半は後期高齢者で、自炊ができなくなったときは給食サービスに切り替えることができるようになっている。将来の安心を付加価値として提供しているわけだ。給食に完全に移行する以前でも、病気で寝込んで買い物や料理ができないときなどは食事のサービスが利用できるシステムになっており、入居者にはさらに大きな安心となっているようだ。
「人件費の問題、スペースの問題、安全性の問題など、さまざまな問題がありましたが、各分野の専門企業の協力を得て、『ココファンキッチン』と名づけた低コスト給食システムを開発し、これらの問題を解決しました。スタッフ1名でも対応可能な小規模施設向けのメニュー・食材・厨房システムです。こうした低コストの仕組みづくりが、高専賃事業を開発するうえで重要になってくるのではないでしょうか」。
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高専賃ココファンがターゲットとしているのは中所得者層。マーケットとしてはいちばん厚い層だ。自立型と介護型に分けたのは、どちらにも対応できる住宅を開発しようとすると中途半端なものしかできないとわかったからだという。両者を明確に分けないことには、必要なソフト・サービスや収支を事前に、しかも綿密にシミュレーションすることができない。
最初にオープンしたココファンレイクヒルズは、3階が高専賃(自立型のみ7戸)、2階がショートステイ(10室)、1階がデイサービス(定員25名)、居宅介護、訪問介護事業所(介護事業に関しては「ココファン南千束」の事業名で登録)。敷地面積は約938平米(284坪)。学研の創業者が住んでいた土地ということもあり、ここからスタートしたが、高専賃として収益を上げるにはもう少し広い敷地が必要だという。
高専賃ココファンでは、賃料のほかに基本サービス費を設けている。基本サービス費とは、緊急通報や夜間パトロールなどの緊急対応サービスと、宅配便や郵便物の預かりや来訪者への対応、ゴミ出しなどのフロントサービスに充てる費用だ。その他、オプションサービスとして、併設の「ココファン南千束」による介護・健康サービスをはじめ、配食サービスや買物代行などの生活支援サービスを提供している。
家賃は、1ルームタイプが165,000円。申し込み開始から1か月間に700件も問い合わせがあった人気物件だ。07年8月にオープンした介護型高専賃の「ココファン尾崎台」(千葉県野田市)でも、家賃は単身者用が64,000円、夫婦用が78,000円。共益費や基本サービス費、食事代、健康サポート費などを入れると170,000円程になる。特養の新型ユニットが首都圏では150,000〜170,000円程だから、特養への空き待ちで、介護度が比較的軽い人の受け皿になる。
また、他社では単身者用の部屋を充実させているケースが多いが、自立型高専賃の「ココファン湘南」(神奈川県藤沢市、2008年2月オープン)では、居室の4割が夫婦部屋。
「ご主人に介護が必要だけれど施設には入れたくない。奥様が介護しながら、緊急時にはスタッフが駆けつけてくれるようなところに住みたいというご希望が多いのです」
さらに、2008年秋には、ココファンレイクヒルズへの入居待ちのニーズに応えて、同じ大田区内に自立型高専賃の「ココファン六郷」をオープンする予定だ。ここには併設するサービスとして、介護サービスのほか、3診療科目のクリニックを併設する計画。土地所有者が高専賃のオーナーとなり、学研ココファンは医療と介護ゾーンを借り上げ、入居者へのサービスを提供する。
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「終身にわたって暮らせる終身建物賃貸借契約であることが、入居を決める大きな決め手になっていると思います。安心して契約できますし、また気軽に退去することもできます。もうひとつは、高齢者の生活を支える基本サービスが整っていることでしょう。プライバシーをしっかり確保でき、残存能力で使えるものは使って、できないところや不安なところだけサービスを利用する。そこに魅力を感じていただいているのではないでしょうか」
医療に関しては、併設する診療所の専門科目にはとくにこだわっていないという。内科でも、整形でも、歯科でもかまわない。入居者の状態を見て、初期症状の段階で地域の専門医にしっかりパスできる体制があり、あとは認知症に対して適切なアドバイスができる医師であることがむしろ重要な選定条件となる。高専賃と連携することは、在宅の診療報酬が優遇されるため、医療機関にとってもメリットがある。
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(株)学研ココファンが高専賃を事業の柱とした理由は次の4つ。
(1) 高齢者の住まい方の現状
(2) 民間事業者から見た高齢者住宅が抱える課題
(3) 有料老人ホームを取り巻く環境の変化
(4) 賃貸住宅市場の将来性
ひとつめの高齢者の住まい方の現状としては、1人暮らしと夫婦のみの高齢者世帯が非常に増えていることがある。同社では、高齢者世帯を対象にアンケート調査を実施し、高齢者の多くが、「有料老人ホームには住み替えにくい」、「施設に入るのはまだ早い」と思っている一方で、「介護状態になったらどうしよう」という不安を抱えていることに注目した。
現在の住まい方に不安があるということは、不安を解消する住まい方に対するニーズがあるということだ。しかし、一般の賃貸住宅の事業主の50%は、高齢者のみの世帯に部屋を貸すことを拒否している。その理由は大きく4つ。「家賃の回収」、「孤独死・独居死」、「火災」、「日常の管理」の不安があるからだ。
こうした現状を踏まえて、同社では、逆に「貸す理由は何か」を考えたという。
「家賃の回収については、保証人がいらっしゃらない場合でも債務保証の仕組みをご利用いただくことで入居が可能になります。しかも終身賃貸借事業なら、入居者にとっては契約更新の必要がないというメリットがあります。ただ、保証人など身元引受人については毎年面談による更新をすることで、リスクを回避しています。2つめの火災の不安に関しては、IHキッチンにする、耐火構造にする、暖房はガスにする、居室内は禁煙にする、スプリンクラーを取り付けるなどなどの対策を講じることで不安を解消することができます。また、孤独死・独居死に関しても、24時間入居者の安心を見守り、緊急時には介護・医療のプロが駆けつけるシステムにすればいいわけです。というように一つひとつ不安をクリアしていったわけです」
少子化の影響でワンルームマンションの空室化が進んでいる。同社にも、改修して高齢者向け住宅に移行できないかという相談がよく持ち込まれるそうだ。現在はワンルームの空きが問題になっているが、10年後は、ファミリータイプの2LDKの空室化が深刻となってくるだろう。2050年は2.5人に1人が65歳以上の時代。住宅市場の変化の波はすでに始まっている。
「私どもが考える高齢者専用賃貸住宅のイメージは、50室くらいを基本パターンとしています。自立型は市街の中心地にあり、スーパーが近くにあるなどの立地が重要な要素となります。また、自立型は入居するご本人が選択しますので、品質も重要です。一方、介護型の場合は、立地にはそれほどこだわりません。それより価格設定を間違わないようにしないといけません」
商品開発にあたっては市場調査とマーケティングをしっかり行う。たとえば、半径3キロ圏内に1人暮らしの後期高齢者が何人いるか、そのうち介護認定者は何人かなど具体的な数字を把握する。また、競合となりうる事業者の状況も徹底的に調べる。価格、入居者の所得、稼働率まで仔細に調べて、商品内容を決定していくという。また、さらに良質な高専賃を開発していくには、今後、さまざまな専門分野との連携が不可欠となってくるだろうともいう。
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話を小規模多機能型居宅介護に戻そう。加速する高齢化のなか、単身もしくは高齢者世帯が、施設ではなく、すべてを自己決定できる暮らしを続けることを選択するなら、その暮らしの拠点はサービス付住宅であることが望ましい。いざというときの医療や食事などの日常の生活支援サービスに加え、介護サービスついては、「通所」「宿泊」「訪問」の3サービスの組み合わせ利用ができる小規模多機能型居宅介護が併設された高専賃などの住まいが主流になっていくことは確かだろう。
ココファンシリーズの成功は、高齢者の不安を解消するためのさまざまな機能を満たすことによる安心の確保にあるとみられる。しかし、小規模多機能型居宅介護と同じ多機能サービスの形態をとりながら、同社では、今後も、「デイサービス」「訪問介護」「ショートステイ」それぞれの事業申請が中心になるだろうという。なぜか―――。
ひとつは事業規模の多様性。マーケットのニーズや建築面積を考慮し、「デイサービス」「ショートステイ」の定員を設定できる。また、訪問介護は利用者数に制限もない。もちろん地域のなかで小規模多機能型居宅介護と同じ役割を担いながら運営できる。もうひとつの理由は、小規模多機能型居宅介護は各自治体の計画にもとづく指定であるということ。高専賃事業のメリットとして、地域の制約を受けにくいという点が挙げられる。つまり、制度上は賃貸住宅であるため、特定施設のように総量規制の対象にならないのだ。高専賃事業者は、適した計画地があり、地主との交渉が円滑に進めば、迅速に計画を進めることができる。ところが地域密着型サービスのように自治体の計画にもとづく指定では、事業スケジュールに制約を受ける可能性もある。これは、事業者側にとっては、コントロールできない事業リスクであるといえる。
小規模多機能型居宅介護と高専賃は事業相性としては非常によいといえる。小規模多機能型居宅介護の持つ「通所」「宿泊」「訪問」といった機能に、高専賃の持つ「暮らす」という機能が加わるからだ。高専賃へ入居を考える人は、24時間365日運営している介護事業所が併設されていることは大きな安心になる。事業者はそれを住宅の付加価値として家賃に転嫁できる。また、小規模多機能型居宅介護の事業は比較的収益率は低いといわれているが、高専賃部分に転嫁した付加価値家賃で収益率を向上させることは可能だろう、まさしくシナジー効果が生まれる可能性があるのである。
大都市圏では急激な高齢化が進むことが予測されており、高齢者が安心して暮らせる住宅に対するニーズは今後ますます高まると考えられる。そのニーズへの対応策となるのが、小規模多機能居宅介護であり、高専賃であることは間違いないといえる。大都市圏では普及が難しいといわれている小規模多機能型居宅介護だが、前述のような高専賃との複合モデルのように、創意工夫することにより事業として成立させることは可能だろう。大都市圏で普及させていくためには、行政と事業者それぞれにおいて、柔軟な対応が求められるのではないだろうか。
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