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川上由里子の「シニアのはなし。」

第10回 “書く”ことの大切さを今、改めて。
東京セレブの新・スタイルマガジン「apple」


伝達手段や自己表現の方法として、昔から人々の暮らしに溶け込んできた「書く」という行為。パソコンの普及により、ものを書く機会は減少したが、最近は川上さんが働くシニアライフの世界でも「書く」ことがもたらす効果は見直されているという。

「1日前の日記を書くのが良いことがわかってきました。脳は足と同様、使わないと老化します。“エピソード記憶”“注意分割”“計画力”という3つの能力が低下すると、認知症を発症するのですが、昨日あったことを思い出そうとしたり、忘れないように意識することで、“エピソード記憶”を鍛えることができるそうです。そんな理由から、最近では認知症予防や初期ケアのひとつとして採り入れられているんですよ」

しかし、ひとくちに「書く」と言っても、書き慣れていない人にとっての第一歩はハードルが高いもの。具体的にはどんなものから始めれば良いのだろうか。

「日記でも、新聞記事や読んだ本の中から好きな文章を書き写すのでもいいんです。マイケア日誌をつけるのもいいと思います。家族構成や内服薬といったパーソナルデータから、週間・月間スケジュール、1日の行動や食事の内容などを書くことにより、自分の生活パターンや心身の変化がわかるうえ、健康管理の記録にも役立ちます」

このほかにも、好きな漢字一文字を筆で書く、文字ではなく絵を描くなど、何を書くかは自由とのこと。

「理想はもちろん毎日書くことですが、一番大切なのは書くことを楽しむこと。自分のできる範囲で、できる時間を使って、無理なく続けるのがベストだと思います」

楽しく続けるためのエッセンスとして、筆記用具選びもおろそかにできない。鉛筆、万年筆、筆、クレパスなど、お気に入りのl本があるだけで、書くことに対するモチベーションが高まってくる。

「シニア世代の方は、持ちやすさや疲れにくさも重視して、太めの筆記用具を選ぶのがいいですね。また、関節が弱ったり握力が落ちてペンが持てないという方のための、手で包み込むように握るタイプやリングに指を通すタイプといった、ユニバーサルな商品も開発されています。そうした中から自分が一番持ちやすいと思える道具に出会えるはずです」

川上さん自身、普段から書く習慣が身に付いているという。お礼状などに−筆添えて送るのはもちろんのこと、取材時に見せてくれた赤い布のノートには、今までに出会った印象的な言葉が丁寧に書き込まれていた。

「“書く”とは、人間だけに備わった能力です。気に入ったものを書けば自分への喜びになりますし、誰かのために書くことが心にハリを与えてくれます。しかも私たちは美しい風景や四季や想いに、日々囲まれて生きているんです。書くことは喜びや感動を形にする行為。あなたが今、書きたい言葉は何ですか?」


東京セレブの新・スタイルマガジン 『apple』 2007年7月号より)



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