意外に知られていないことですが、住み慣れた住宅内での事故による死者数は年間約1万2000人。このうち70%以上が65歳以上のシニアです(2005年:厚生労働省)。死亡原因第1位は浴室での「溺死」。「転倒・転落」を合わせると、半数以上を占めます。交通事故で亡くなる方よりも家庭内事故で亡くなる方のほうが多いのです。従来の日本の住宅は元気な方を対象にして造られており、足腰が弱ったシニアの方や障害者の方が暮らしやすい住宅というのはまだまだ少ないのが現状です。にもかかわらず、住宅内での事故原因は「自分の不注意」と思い込んでいる方が多く、住宅構造がシニアの体に適していない、という状況は見落とされがちです。そこで今月は、「体に住まいを合わせる工夫・リフォーム」についてお話します。
【介護が必要で歩行が不安定な80代“要介護2”のBさん。浴室のリフォームの話し合いに立ち会いました。Bさんの家族は、付き合いの長い地元の有名な建築士A氏に依頼しました。ところが、話し合いは“外国のホテルのように広くてガラス張りのおしゃれな浴室”へと盛り上がっていきます。不安を感じた私はBさんに、「その浴室を利用しているイメージが出来ますか? 安心して毎日お風呂に入れそうでしょうか?」と伺いました。Bさんは「そうねぇ、そんな広くてハイカラな浴室は落ち着かないわね。また転びそうよ」。ようやくプランを修正する方向へ向けられたのでした】
このようにリフォームの目的は「より生活しやすく改善すること」。まず、シニアの方が感じている不便がどこにあるのか、日常の生活動線を細かく見つめなおし、“問題点を知る”ことから始めましょう。そして、どうリフォームして、日常生活がどう変わるかを考えることが大切です。また、介護者がいる場合には、「介護者の負担を軽減させることにつながるのか」も考えましょう。
たとえば、シニアの方が不便を感じる場所第1位の入浴ゾーン。Bさんの場合は膝の関節症による関節の痛みがあり歩行が不安定な状態。体調の変化も激しく、心配を抱えていました。“浴室への出入りが困難”“浴槽をまたぐ際につかまるところがなくて転倒が不安”“浴槽内から立ち上がれない”“気温差が辛い”“居間から浴室までが暗く遠くて危険”“密室で助けを呼べない不安がある”……など入浴に消極的になってきた原因はさまざまにあるはずです。
その原因をできるだけ探り、リフォームを決めたら、業者のところへ行く前にまずはケアマネジャーに相談をしてください。アドバイスを得るだけでなく、介護保険制度による住宅リフォーム助成金20万円が支給されるのに必要な“住宅改修が必要な理由書”を作成するためです。他の専門家でも作成できますが、これがないと助成金が受け取れませんのでご注意くださいね(支給対象は、手すり、スロープの設置、引き戸への取替えなど6項目に限定)。
さて、前述したBさんの浴室はその後、どうなったでしょう。建築、介護それぞれの専門家と家族、Bさんで総合的に見直し、次のようにしました。“出入り口に縦手すりを取り付け動作の安定を確保”“緊急時に家族がすぐに入れるように扉を引き戸に変更”“お風呂に浸かったときに掴まれるL字型手すりをつけ入浴中の姿勢を保持”“持ち運び可能な呼び出しブザーを導入し緊急時の不安を解消”“床材を滑りにくいものにし転倒予防”“床暖房を入れ気温差を最小限に”。ガラス張り浴室よりもお金がかからず、これまでの使い慣れた浴室とさほど変わらない、安全でより便利な浴室へとリフォームすることができました。
より快適なシニアライフを目指して、「どのように住まいを体に合わせるか」。まずはお気軽にお近くのケアマネジャーに相談してください。
(
東京セレブの新・スタイルマガジン 『apple』
2007年5月号より)
第7回
ひとり暮らしの安心・
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第9回
椅子で“居場所”を作りませんか?
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