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川上由里子の「シニアのはなし。」

第6回 シニアライフ 心の旅のススメ 著書『介護生活これで安心』誕生話。 自分らしい人生ってなんですか?
東京セレブの新・スタイルマガジン「apple」


「私は、静岡県の海と山に囲まれた桜海老漁のさかんな小さな町で生まれ育ちました。ある晩、黒くて大きな往診カバンを抱えた父に、「由里子も一緒に来るかい?」と声をかけられお供しました。車で10分、仲良しの友達の自宅で家族がおばあさんを囲んでいました。父が心音を聴診器で聴き、脈をとり、時間を告げると、友人、家族、親戚皆が涙をながし、お別れの声をかけました。…(略)…子供の私には何もわからないことばかりでしたが、それでも何も怖くなく、むしろ温かく心に残っています。それが私にとって初めての家族ではない人の最期を体験した時間でした。…(略)…  

私は三井不動産のケアデザインプラザの「ケアデザイン」の考え方に共鳴し、事業の立ち上げメンバーとして参加。高齢期の暮らしに関わる相談業務全般の責任者という役をいただきました。溢れる情報、複雑化するライフスタイル、シンプルには生きにくい現代社会。だからこそ相手の気持ちを理解したい。どうしたら本人にとって、家族にとっての問題解決ができるのか……ケアデザインプラザの仲間たちと共に考え、試行錯誤を繰り返してきました。本書には、「問題に直面する前に知っていればよかった」という声を何度も聴いた私と、相談に訪れた方々の想いが詰まっています」。





今月は昨年12月に出版した『介護生活これで安心』(小学館)の誕生話をさせていただきたいと思います。  

始まりは8年前、二子玉川高島屋S・C内に高齢期の暮らしを支える「ケアデザインプラザ」がオープンし私は立ち上げメンバーとして参加しました。現在は東銀座駅近くに転居し、2000年の介護保険制度の開始以降、高齢社会の変化を感じながらシニアライフに関する切実な声を伺い続け、サポートをしてまいりました。そして昨年、これまでの相談や医療現場での経験をもとに介護コンサルタントとしての軌跡を本にまとめました。本はQ&A方式で、「突然、母が倒れました。家族がすべきことは?」、「遠距離介護に役立つサービスは?」などシニアライフに関する多様な相談に役立つノウハウを紹介しています。

介護問題は自分を見つめる機会でもあります。認知症の治療に回想法という子供の頃の写真を見ながら行う心理学的な援助法があります。健康な高齢者にとっても人生回顧=ライフレビューとして応用され、今後を描くのに役立ちます。「自分の人生を川の流れにたとえるとどんな川ですか?」、「どんな大人になりたいと思っていましたか?」、「ずっと続けて大切にしていることはありますか?」など……。  

例として私自身のライフレビューを少し書きましょう。私は子供の頃から人好き世話好きで大人になったら看護師になることを決めていました。看護師として13年間患者さんの近くで過ごし、その経験からシニアの方が暮らしで抱える不安や悩みをうかがう介護コンサルタントとして従事してきました。誰もが抱える生老病死の喜びや哀しみ、悲しみや不安など人の心に寄り添う仕事を生涯続けてゆきたいと願っています。大切にしたいことは“想う力”。私にとってこの世で最も美しいものです。ずっと続けていることは海を見ること、笛を吹くこと、本を読むこと。太陽のようにあたたかく、鳥のようにきれいな声で唄い、よく笑い、泣き、自然を感じながら暮らしてゆけたら……これは願いです。さあ、皆さんのライフレビューから未来はどんな風に描けるでしょう?  

折に触れ自分をみつめることがシニアライフのあり方に大きく影響します。皆さんも昔、子供だった自分を原点にライフレビューを描き、心の旅で行きたい場所へ行ってみませんか? その場所こそシニアライフがめざす場所です。



東京セレブの新・スタイルマガジン 『apple』 2007年3月号より)



  第5回
高齢期の住まい。(2)
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